へそを落とした話

こけしのつづきを。

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m.zuiko 30mm 3.5 macro
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あるところにあった”エッセイ”が面白かったので引用します。

 へそを落としました、という知人がいる。Kさんだ。年は三十半ばくらい。誰かが「端正だ」と褒めていた、おひな様みたいな優男である。
 その顔が、青ざめている。・・・
 「落としたって、どこでですか」
 「自宅の、風呂場」
 シャワーを浴びていて、ふと足元を見るとへそが転がっていく。ああどうしよう、まさか、と思っている間に、大事なへそはシャワーの湯ごと、排水口へ吸い込まれてしまったらしい。
 じゃあ、今、へそ、無いんですね。半分笑いながら訊くと、うつむき加減の小さな声で「怖くて、それから、見られなくて」。
 これを噓と言うのは簡単だ。しかし、わたしはわりに、情に篤いたちである。噓でしょう、見まちがいでしょう、と言う代わりに、へそがどうしたって言うんですか。へそなんか無くてもなんとかなりますよ、と励ました。・・・
「群像」2015年4月号 早助よう子「善き人々の受難」

読みながら緑色のカエルを思い出したのは、昭和のカゼ薬CMがしっかり記憶されているせいに違いありません。

沖縄の日なので、塚本邦雄「新歌枕東西百景」中、沖縄縣那覇市首里桃原町という地名からつくられた歌を。
 ぬばたまの夢の海溝くぐり來て首里の泉に浮く桃の花   (塚本邦雄:新歌枕東西百景)

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