2019/07/15
グラジオラスの歌がないと書きましたが、塚本邦雄の若書きの遺稿のなかに、
“背き去る女にグラディオラスの花序”
という俳句がありました。
彼の俳句は短歌のための覚書の役割を持っていたかのように、この俳句の前後にある、
“ひまはりに幾百の舌ひるがへる”や“密會や扇のようにひろがる夜”は、「水葬物語」の、
“永いながい雨季過ぎ巨(おほ)き向日葵にコスモポリタンの舌ひるがへる”や“密會のみちかへりくる少女らは夜を扇のやうに身につけ”を連想させます。
グラジオラスの俳句に対応する水葬物語の歌は見つかりませんが、
“赤い旗のひるがへる野に根をおろし下から上へ咲くジギタリス”が「花序」という言葉で対応するのかもしれません。

olympus e-m5mk2 e.zuiko75mm

olympus e-m5mk2 helios 85mm

olympus e-m5mk2 helios 85mm
ブルトン「自由な結合」は學藝書林社 全集・現代文学の発見第7巻「性の深淵」(昭和45年4月30日発行)から引用しました。これを初めて読んだのは別の本だったと思うのですが、心当たりの本を探しても見つけられなかったので、こちらから引用しました。
出版社の學藝書林は当時先鋭的なアンソロジーの全集を出していて、しかも安価でしたのでお金のない学生には魅力的でしたが、装丁や紙質は安っぽく活字も小さくていかにも貧しい若者向きでした。
それと誤字誤植が他社の出版物に比べて多いように感じました。きのうの引用文にも間違いではないかという字もあるのですがそのまま引用しています。
ネットで「自由な結合」を検索するといくつか訳文を見つけることができるしそちらのほうが分かりやすいものもあるのですが、pithecantroupusは「紙」の信奉者ですので、インターネットの検索結果をそのまま引用できずに、せっせとホコリを払って50年も前の本を引用しました。