夏果つる

塚本邦雄
私財蕩尽夏果つるとて大伯父は蘆に鱸(すずき)をつつみて賜ふ  (歌人)
晩夏汗噴くゆふべにたれか投凾すビラ夜の彌撒に參加のすすめ  (風雅)
死ののちとなどなほざりにねがひけむ蜻蛉(あきつ)きらめきつつ空に逢ふ  (森曜集)

いまさらに8月の残りもの。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8

終りを告げて ~ ムービー「夏のおわり」

塚本邦雄
「すみやかになせ」と聞きたり雨中なる他界の石榴くれなゐきざす  (歌人)
人の妻たりけるものの死にのぞみ何ぞ百日紅(さるすべり)の風さわぐ  (風雅)
さはやかに戀の終りを告げて振る去年の汚點のある夏帽子  (歌集未収録)

夏の8月が終わります。
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ことしの夏をふりかえってblogに使った写真でムービーにしました。


あはれ停れ

塚本邦雄
胎児いだくかたちにかがみ八月のあはれ停れる少年鼓隊  (日本人靈歌)
今われのもつともあたらしき部分、肘裂創(れつそう)の口鮭色に  ( 々 )
さむき晩夏 ゆるしあふことなきわれら家族の脂泛かぶ浴槽  ( 々 )

元興寺。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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SUMMILUX 15mm F1.7
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

婚礼のごとし

塚本邦雄
八月の森、いたましき婚禮のごとし二本の杉立ち枯れて  (日本人靈歌)
八月の卵をえらびつつわが手ともすれば流血のつぶえらぶ  ( 々 )
平和祭 黑き蘭鑄(らんちう)ひれをふる罰やすみわれに汗のまどろみ  ( 々 )

元興寺がつづくので、地元の22日の夏行事へちょっともどって。
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8

知己と

塚本邦雄
供華(くげ)のあまりの一莖なれば水際の鬼灯(ほほづき)あはれ鬼のともしび  (黄金律)
歌のほかの何を遂げたる 割(さ)くまでは一塊のかなしみの石榴(ざくろ)  (豹變)
死してもわれの知己とおもふに炎天の墓石に帽子かける釘無し  (日本人靈歌)

元興寺地蔵会明り。
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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NOKTON 25mm F0.95
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

夏負けの

塚本邦雄
白粥の椀ささげつつ息はずむわれや夏負けの敗軍の將  (黄金律)
反・反歌論草(さう)せむとして夏雲の帶ぶるむらさきを怖れそめつ  (歌人)
柘榴食ふ犬齒浮くまで讀みさしの「ナナ」が天然痘で死ぬまで  (驟雨修辭学)

まだ元興寺地蔵会。
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NOKTON 25mm F0.95
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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NOKTON 25mm F0.95
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SUMMILUX 15mm F1.7

あかあかと悲し

塚本邦雄
昭和三十二年八月 螻蛄(けら)のごと奔れり午睡の町をジープが  (日本人靈歌)
孔子に隋ふ處女(をとめ)ありしや 心冷え牛乳(ちち)を晩夏の水もて淡(うす)む  (綠色研究)
死ぬまでの否生(あ)れかはるまでの生 夜の玩具市あかあかと悲し  (詩魂玲瓏)

奈良、元興寺地蔵会。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

元興寺の極楽堂を中心に行われる「地蔵会」に行きました。この日は境内が開放されてだれでも堂に入れました。日の落ちるのが早くなって6時半にはたそがれてきて灯明に火が入りました。石塔や石仏をまとめてあるところを浮図田(ふとでん)というのだそうですが、さして広くないものの、灯明が並べられてその菜種油の煙があたりにただよい、地蔵盆の雰囲気を満喫できました。

こころの遊び

塚本邦雄
「熱月(テルミドール)」などと名づけし空想の酒場しらじらしく君不惑  (驟雨修辭学)
險しこころの遊(すさ)びてふこと夜の水に觸るる刹那の火の百日紅(さるすべり)  (蒼鬱境)
サントニン黄視症にてこもれるを若者が鼻唄の<颱風(エル・ウラカン)>  (水銀傳説)

奈良でニュー・ギア。
新しいレンズが今日お昼前に届いたのでさっそく試写してきました。
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

いままで使ったことのない焦点距離で、軽くてコンパクトというメリットに惹かれて購入しましたが、像面湾曲があるのか、いつものように中心でピントを合わせて置きピンにしようとしてもうまくいきませんでした。解像力もかなり低く感じます。ピントリングの動きはわたしにはやや軽すぎました。
それでも、わたしのおサイフには相応の品でした。

処暑

塚本邦雄
人の子の父人の子の母を擁き骨より白し秋の向日葵  (靑き菊の主題)
八月某日辛うじて眼の孔あきし樽かぶりサンドイッチ・マン立つ  (日本人靈歌)

処暑なので、すずしげな写真を。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

目つむればこの世

塚本邦雄
夏過ぎてひらく希臘(ギリシア)の春婦傳しをりうしほのにほひ沁みつつ  (驟雨修辭学)
空蟬をにぎりつぶして目つむればこの世のとどのつまりの響き  (約翰傅偽書)
晩夏とてもとよりうたふすべ知らぬ母が深淵の色のかたびら  (歌人)

昨夜ご近所で。
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

夏のなごりの

塚本邦雄
晩夏臙脂の光の中に渇きつつおもふなんぢをあやむること  (歌人)
老婆に遅れわれにはるかにさきがけてつぼみもつ夏のなごりの薔薇  (綠色研究)
佐久良氏立つて祝意開陳BGM「秋の幽霊」不意に消えたり  (黄金律)

赤い傘。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

塚本邦雄の歌は古典や短歌や世界史などの広汎で博学な知識を踏まえていると聞きますが、それらに不足する私は読んで印象を楽しむ情緒的な受け取り方をしていて、それで自己満足しています。
『佐久良氏』の歌は「秋の幽霊」など知りませんが、サクラ、秋、怪談の夏とでてきて、季節が分からないことが面白いと思っています。


ご近所のお寺で。

熟睡してなお

塚本邦雄
炎天に葡萄のたぐひ鬻(ひさ)がれてむらむらと靑し退くなかれ  (透明文法)
井戸うがつひびき夏天にこもりつつ熟睡(うまい)してなほ喪ふ睡り  (綠色研究)
夏あきらかに翡翠が歩(あり)く夕星(ゆふづつ)の息ひそめたるその水の上  (歌人)

ご近所のお寺で。
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NOKTON 25mm F0.95
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NOKTON 25mm F0.95

記憶のかけら

塚本邦雄
藍の蝙蝠傘(かうもり)さしかけらるるわが肩のしぐれよ〽志をはたして  (風雅)
靑酸漿(あをほほづき)まばらなれども直江津に一夏(いちげ)すぐさむ父にて候  (豹變)
アリサなど記憶のかけら半身を此岸(しがん)におきて鮎くらふとき  (歌人)
禁じられし遊びの邑に夏ふけて玄鳥の白き胸をなげくも  (綠色研究「国王Lと哲学者Nによせる脚韻二十行詩」より)

岐阜川原町。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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SUMMILUX 15mm F1.7

みのおわりながら川

塚本邦雄
鳥の聲澄むみのをはりながら川  (殘花帖)
たそがれや鮎蒼きこと十八糎  (甘露)
良夜かな盥に紺の衣漬けて  (斷絃のための七十句)

大垣。
ウサギ居ました。
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8

塚本邦雄の俳句とブログの写真が微妙に一致しないのはまだ暑さにボーッとしているから。

光待ち

塚本邦雄
萬葉(まんえふ)のみどりさやけき光待ち母は子とありしののめの海 (新歌枕東西百景 千葉県匝瑳郡光町母子)
涼風(すずかぜ)に鳴るや篠竹よみがへるきみとわがこころの越天樂(ゑてんらく) (新歌枕東西百景 奈良県宇陀郡榛原町篠樂)
山川(やまがは)のかをれる鮎を食(くら)ふべくかなしも神の母なるマリア (新歌枕東西百景 高知県高岡郡大野見村神母野)

ちょっともどって大垣。
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

別るべし

塚本邦雄
泪、肉桂の香を帶びつつあり 別るべし 敗戰の日のこのわれと  (風雅黙示録)
修羅能觀ての歸りの白雨あざらけし大東亞戰争の敗者われ  (汨羅變)
敗戰忌なり戰中派わたくしは必殺の蠅叩きかざして  (詩魂玲瓏)

岐阜市川原町。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

過蜜の夏 ~ ムービー『祇園祭後祭宵山の日』

塚本邦雄
「クラリネット五重奏曲」警笛に寸斷されて夜の敗戰忌  (詩魂玲瓏)
過密都市あるいは過蜜都市の夏われらがいけるしるし蟻の巢  (獻身)
マノス・ハジダキスなど知らぬ友とゐてさびしや萱草色(くわざういろ)の夕映  (不變律 丙寅五黄土星八月暦 二十四日 日曜 先勝 瀧廉太郎誕生日 牧水誕生日)

マノス・ハジダキスが作曲家で、『日曜はダメよ』でアカデミー賞をとった人とは知りませんでした。
せっかく一週間の盆休みでしたが、カメラを持ち出したのは半日だけ。
ひと月も前の写真の残り物。
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その残り物をあつめてムービーにしました。
祇園祭後祭宵山の一日。


酷似する日日

塚本邦雄
死者が遺せしシーツのごとき夕空が垂れて平和に酷似せる日日  (日本人靈歌)
こころもち寒き盂蘭盆塋域(えいゐき)の百の茶碗がさざなみ立ちて  (黄金律)
簗にひしめく若鮎數百(すひやく)かつて「わがおほきみに召されたる」は誰れか  (魔王)

岐阜市川原町(湊町・玉井町・元浜町)で、植物系を。
鵜飼で有名な長良川のほとりです。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm
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SUMMILUX 15mm F1.7

忘れず

塚本邦雄
御影石切りいだされてうちつけに烈日を浴ぶ 明日敗戰忌  (黄金律)
死して護國の鬼とはならざりし父の子のわれや亡國の歌人  (風雅黙示録)
その夏の葬(はふ)りの死者が戰死者にあらざるを蔑(なみ)されき 忘れず  (詩魂玲瓏)

7月の京都の残り物で。
昼間が暑いので夕方の写真ですこしは涼しく。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 75mm F1.8

護国が国を守ることならば、亡国は、亡んだ国ではなくて国を滅ぼすことでしょうか。

ヘリンボーン

塚本邦雄
氷囊のぬるきしたたり白馬を冷せし遠き河に流れよ  (装飾樂句)
織目「鯡の骨」に似せたる晴着きて燒かれたる國の男らやさし  ( 〃 )
高熱の遠き闇にて噴水の芯の靑年像濡れどほし  ( 〃 )

もうすこし大垣。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8

「鯡」をにしんと読むことは知りませんでした。織目「鯡の骨」がヘリンボーン模様のことというのも知りませんでした。歌の意味もよくわかりません。恥ずかしい。

ひとときの夏

塚本邦雄
詩人たることはさておきボクサー犬カタログに選るひとときの夏  (黄金律)
顯(あら)はるる惡事のごとく夕暮の冷房蹠(あうら)よりぬるみそむ  (装飾樂句)
かつて憲兵、さう生きるより他知らず縁日の火の色の金魚屋  (魔王)
機銃掃射の下を逃げまどひし記憶まざまざと天竺葵(セラニウム)の屍臭  (汨羅變)

大垣で。
お土産にマスを買いました。大垣は全国シェア80%のマス生産地だそうです。お堀ぞいの「枡工房枡屋」で買ったお土産ですが、写真のピントがマスではなくマスの中身にあっているのは私の趣味です。
この中身も枡屋さんで一緒に買いました。家に帰ってから気づきましたが、起き上がりこぼしになっていました。
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Zuiko ED 50mm F2.0 Macro
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8

朦朧と映りあい

塚本邦雄
平和祭に行かざりし夕つ方あつき息吐けば熱き硝子戸くもる  (日本人靈歌)
平和祭に赴(ゆ)きてかたみに激しつつ別れたるのみ 目の中の砂  ( 〃 )
朱の漆ぬりかへし家具朦朧と映りあひつつ夜の平和祭  ( 〃 )

きょうは水の都、大垣へ。
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8

塚本邦雄にとって「戦争」という言葉は特別ですが、「平和」という言葉はさらに特別であったように思えます。
『永かりし昭和の不和のいやはての血しぶき まぼろしの百日紅(さるすべり)』という歌の「不和」も、ふつうに「仲が悪い」という意味でなく、「平和」の反対語として使われていると感じるのです。
不和と平和と韻を踏んだ一対と思うのです。

うれしのの

塚本邦雄
夢にさへ搖るる山百合谷かげの一夜の戀をわれに誘(いざな)へ  (新歌枕東西百景 山口県玖珂郡美和町百合谷)
晩夏いま心は飢(う)うれしののめの天にうすくれなゐの花あり  (新歌枕東西百景 三重県一志郡嬉野町天花寺)
誰(た)がために甘き眠りも絕え絕えの夜々(よよ)かや靑き羽根の蜻蛉(あきつ)よ  (新歌枕東西百景 静岡県田方郡天城湯ヶ島町青羽根)

宇気郷。
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 17mm F1.8

去年もこの刻

塚本邦雄
あかがねいろの油蟬わが背後にて歔欷(すすりな)き刹那「朕惟フニ」  (獻身)
原子爆彈官許製造工場主母堂推薦附避妊藥  (透明文法)
平和祭 去年(こぞ)もこの刻牛乳の腐敗舌もてたしかめしこと  (日本人靈歌)

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Zuiko ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD
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Zuiko ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD

いやはての

塚本邦雄
炎天に垂るる鞦韆(しうせん) 眸(まみ)とぢて易々としたがひ來しものの果て  (装飾樂句)
眞向より蜻蛉(せいれい)に視つめられゐし刹那 九十九までは生きむ  (風雅黙示録)
永かりし昭和の不和のいやはての血しぶき まぼろしの百日紅(さるすべり)  (詩魂玲瓏)

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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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キヤノン7用 CANON 50mm f0.95

ちよろづのいくさ

塚本邦雄
雨ふりだすその遠景に母と百日紅(さるすべり)立ち老ゆる姉妹のごとし  (感幻樂)
父は木槿に向きてほほゑむ 千萬(ちよろづ)の軍(いくさ)に言擧(ことあ)げせざりける悔い  (黄金律)
紅蜀葵(こうしよくき)、みづからがまづ標的になる戰爭をはじめてみろ!  (風雅黙示録)

宇気郷。
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

塚本邦雄が戦後に歌壇レビューしたときは既に30歳に達していたそうです。
かれにとって20代は惜しんでも惜しみきれない時間だったと思います。芸術的にもっとも創造力に富んでいたであろう期間を不本意に送ったことへの口惜しさを感じます。
戦争を攻撃しするのも、青年を愛するのも、失われた自らの20代への挽歌ではないかと。「!」は激しく強い感情の発露でしょうか。

ふはふはと

塚本邦雄
平和記念ドーム觀に來て老婆たちふはふはと綿菓子を食ひをる  (装飾樂句)
原爆展觀に來てすぐにかへりゆく少女酷寒の黑き手袋  ( 〃 )

松阪市嬉野中郷のあたりで。
とおく雷がなっていました。
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

きょうは原爆忌です。塚本邦雄には原爆の歌がありますが、それらには、とても読みにくい、文法的でなく人間の感情として読みにくい歌があります。悲惨な現実を正直に表現するからでしょうか。
また、「反語」ではないか、と思う歌もあります。
『原爆展觀に來てすぐにかへりゆく少女酷寒の黑き手袋』は、わたしには酷寒は炎暑、黑は白ではないのかと思えるのです。もちろん白い手袋を夏でもしているのは普通の少女ではありません。

まだ見ぬ他界

塚本邦雄
象の膚(はだ)灰色に濡れいまだ見ぬ他界の壁のごとし八月  (汨羅變)
夏、慘と照れるひととき砂色の生薑(しやうが)賣り來る死者のこゑして  (日本人靈歌)
桔梗濃く天涯に咲き生きのこりたればまた殺さるるわれらか  (天變の書)

なお宇気郷。ほんとうに美しい村です。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

みじかき夏その

塚本邦雄
姉は細りつつ「さごろも」を読み飽かず鬼籍に一時預けの日傘  (歌人)
みじかき夏そのみじか夜のあかつきに顕(た)ちくる言(こと)ひとつ 「葱花輦(そうかれん)」  (豹變)
炎天ひややかにしづまりつ終(つひ)の日はかならず紐育にも❢爆  (汨羅變)

「やまゆりの里」といわれている三重県松阪市の嬉野小原町宇気郷(うきざと)地区です。
残念ながらやまゆりは終わってしまっていて、名残りを写真におさめただけでした。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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M.ZUIKO 75mm F1.8

塚本邦雄は伏せ字を経験した世代です。
『炎天ひややかにしづまりつ終(つひ)の日はかならず紐育にも❢爆』の❢は、何という字の伏せ字なのでしょうか。
原爆とするのが一番意図に合っているような気がしますが、水爆でも空爆でも入ります。
現象だけみて9.11の予言を連想をするのは、大きく意図からずれていくように思います。
❢はきのこ雲にも似ているのですが、けしからんものを伏せ字にしたのは戦前だけでなく、戦後も男女のシンボルをマジックで黒塗りする行為はまだ展覧会のニュースなどに見られます。
❢のかわりに「水」という女性の股間に似た形の字をおけば、❢は精液の滴りということにもなりそうです。
「原爆」なら「原」ではなく「爆」のほうを伏せ字にするのではないかという疑問が残るので、こんなことを考えてしまいます。
もっとも、この歌を読むときは、つい『ニューヨークにもボム』と読んでしまいます。
ありえない読み方だけれども。

夏もよし

塚本邦雄
夏もよしつねならぬ身と人はいへたかねに顯ちていかに花月(くわげつ)は  (雪月花 あとがき)

多度峡。
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キヤノン7用 CANON 50mm f0.95

閒歇性平和症候群

塚本邦雄
愛にこそ女(をみな)も死なめ澤桔梗(さはぎきやう)月白き野にみだるる葉月(はづき) (新歌枕東西百景 群馬県利根郡月夜野町奈女澤)
カフェオーレ啜りレオ・フォレ聽く夏の閒歇性平和症候群  (魔王)
きみの命脈なんでふ盡きむまぼろしの柩、六稜の星をかかげよ   (汨羅變)

なお羽島、なおヒマワリ。
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NOKTON 25mm F0.95
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SUMMILUX 15mm F1.7

『六稜の星』は、五稜星プラス一稜と、わたしには思えます。
五稜星(五芒星)は旧陸軍の徽章でした。

翳れる

塚本邦雄
八月の死火山の尾根ちかぢかと兵士の肩のごとし 翳れる   (日本人靈歌)
「一(ひとつ)、日本を呪ふべし」とぞ八月の天よりの章(ふみ)、御名御璽(ぎよめいぎよじ)無し  (汨羅變)
こころは肉にかよふ葉月のうすら汗武者(むさ)が髪結はるる頸の汗   (感幻樂)

岐阜羽島、大垣周辺でのヒマワリ。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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キヤノン7用 CANON 50mm f0.95
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キヤノン7用 CANON 50mm f0.95
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キヤノン7用 CANON 50mm f0.95