末路おもいて

塚本邦雄
ひとよ初夏の別離再會行き違ひ老母(おいはは)獨活(うど)のごとくに立ちし  (花にめざめよ)
少年發熱して去りしかば初夏(はつなつ)の地に昏れてゆく砂繪の麒麟  (装飾樂句)
大工ヨセフの末路おもひてそびやかすひだり肩はつなつの夕暮  (波瀾)

なお揚輝荘。
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揚輝荘のうち、ハーフティンバーの外壁など山荘風建築の『聴松閣』内で
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『聴松閣』玄関のたたき。種々の木の輪切りや雲母で飾られていたそうです。
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揚輝荘地下室の地下トンネル入り口。トンネルは幅が一間あるそうです。
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聴松閣地下室の壁画は、揚輝荘に寄宿していたインド人パルク・ハリハランが、アジャンタ石窟の壁画を模して描いたものとか。ピントが視線の先にあってしまう煩悩の輩め、と自分を叱責。
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昭和12年に建てられた聴松閣には、施主伊藤次郎左衛門祐民がその3年前に訪れたインド、ビルマ、タイなどのイメージが豊富です。これもヒンズーの女神でしょうか。
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一階の中国風居間。
なおパルク・ハリハランはその後、インド独立運動にも関わり、日本人を妻に迎えて日印交流の架け橋にもなったそうです。

やすらぎもはや望むなし

塚本邦雄
きつとたれかが墜ちて死ぬからさみどりの草競馬見にゆかむ吾妹子  (魔王)
死はいかなるやすらぎもはや望むなし鮮黄の火の夕かきつばた  (睡唱群島)
われおもはざればわれなきやすらぎはいさ、ぬばたまの夜の鐡線花  (豹變)

気分転換に真夏日の名古屋、揚輝荘へいきました。
地元の老舗百貨店、松坂屋の初代社長伊藤次郎左衞門祐民が大正から昭和初期にかけて建てた別荘だそうです。
地下室はちょっと色っぽい。
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あらぬ世の

塚本邦雄
あらぬ世の文借を済(な)すごときか夕蠓(ゆふまくなぎ)にさからひあゆむ  (詩歌變)
生者をして生者葬らしめよとや柹は薄萌黄(うすもえぎ)の花隠れ  (睡唱群島)
ドストエフスキー絶えて読まざる安らぎのいはば麥秋の香の壮年  (豹變)

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たのみの綱の

塚本邦雄
飮食(おんじき)の思ひはかなき靑麥の穂は花店に束ねられたり  (驟雨修辭学)
遺影コーカサスより還り麥秋のすでに腐敗を始めたり死は  (日本人靈歌)
にくしみゆたかにみのりてここに麥秋のみづからを収穫(とりい)るる家族ら  (水銀傳説)
歌人おほかた虛空にあそぶ靑葉どきたのみの綱の佐佐木幸綱  (波瀾)

つくづくと、日々守られていると感じます。
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たましいの袋小路

塚本邦雄
稀には死を念ふ その刻たましひの袋小路に零(ふ)る松の花  (約翰傅偽書)
著衣せる聖母マリアの肖像にむきてむなしき夜の挨拶す  (透明文法)
韻文のきのふほろびて麥熟るる光にわれはさらさるるかな  (星餐図)

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袋小路のさきに

塚本邦雄
袋小路の肉屋に妻は肝臓と舌を約せり さむきジッド忌  (日本人靈歌)
たれかひくく軍歌唄へり羽蟲地のうへ吹かれゆく夜の慰靈祭  (装飾樂句)
父らが胸に胸毛うづまくはつなつと格子缺陷國際會議  (綠色研究)

京都。
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Nocticron 42.5mm F1.2
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Nocticron 42.5mm F1.2
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Nocticron 42.5mm F1.2
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Nocticron 42.5mm F1.2
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Summilux 15mm F1.7

視線のいらいら

塚本邦雄
麥秋の芒(のぎ)の視線のいらいらとレオナルド・ダ・ヴィンチ性交斷面圖  (黄金律)
神官、警官ともに町湯の螢光にシャツ脱ぐと兩手ささげし俘囚  (日本人靈歌)
國に殺されかける二十三歳の初夏(はつなつ)勿忘草(わすれなぐさ)のそらいろ  (魔王)

京都で、タテとヨコを。
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Nokton25mm
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Nokton25mm
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Nokton25mm

百あまりくれない

塚本邦雄
神官装束お仕立處すぎむとし須臾松風を聽きたるなり  (黄金律)
建つるなら不忠魂碑碑を百あまりくれなゐの朴ひらく峠に  (魔王)
風上に刈らるる麥の香にむせぶさきの世のわが念者サムソン  (靑き菊の主題)

京都、嵐山。
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42.5mm F1.2
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28mm Pentax Soft lens F5.6
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28mm Pentax Soft lens F5.6
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28mm Pentax Soft lens F8

忽然として裂帛

塚本邦雄
初夏のあやふきとびら烈風に煽られつつマルク・シャガール嫌ひ  (歌人)
書かずうたはず初夏(はつなつ)の日々ものうきに忽然として裂帛の百合  (黄金律)
萬綠の毒のまみどり死ぬ方法かずかぎりなく一つも無し  ( 〃 )

京都、車折神社。
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42.5mm F1.4
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15mm F1.7
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42.5mm F1.4
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42.5mm F1.2
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25mm F0.95

コーダのごとし

塚本邦雄
柹の花顱頂(ろちょう)にこぼれこぼれゐき今日、詩歌とはなにならざるか  (歌人)
揚雲雀そのかみ支那に耳斬りの刑ありてこの群靑の午(ひる)  (綠色研究)
禁慾きはまりしうつつに麥秋の麥うちなびき全絃合奏(コーダ)のごとし  ( 〃 )

京都。
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ワース・ハーフ

塚本邦雄
わが埋葬ののちにかがやき 髪なせる太陽神経叢のはつなつ  (水銀傳説)
頬髭(ほほひげ)の死んでも詩人 夏ひらくかなしき方角に扉あり  (豹變)
芍藥と半音階と麺麭の耳愛し銀婚の日の惡伴侶(ワース・ハーフ)  (綠色研究)

京都。嵐電がらみで。
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ゆらゆらと

塚本邦雄
誰の死後 否 夜の桐の花群に樂(がく)ゆらゆらと滿ちきたるなれ  (豹變)
あまりに美しき歌枕はつなつの花巻に來て男おとろふ  (風雅)
十方に靑葉のかげの冥き日も眸(まみ)ひらき明日を夢みしと言へ  (透明文法)

京都で。
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火星にもひとり

塚本邦雄
菖蒲一束わがしかばねをおほはむに恥づ人殺し得ざりしこの手  (感幻樂)
燕麥(からすむぎ)一ヘクタール 火星にもひとりのわれの坐する土あれ  (閑雅空間)
死なばまたかへらむ修羅に韻文は芍藥の香のごとくひびけよ  (星餐図)

京都。
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花終りたり

塚本邦雄
はだしにて犬連れありく三度目の亭主 蠶豆(そらまめ)の花終りたり  (黄金律)
歌ひおほせて何はばからむ松の花散りつくしたるのちの虛空(おほぞら)  (不變律)
われを撃て麥秋のその麥の閒を兵士のわれがおよげるを撃て  (魔王)

京都にて。
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帷子ノ辻駅付近
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御室駅付近
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妙心寺駅付近
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竜安寺駅付近

ここを過ぎれば

塚本邦雄
極道と呼ぶ華麗なる惡名にわれははるけし帷子(かたびら)の辻  (天變の書)
托鉢僧の若き一隊過ぎ初夏の町をきびしきものもてけがす  (日本人靈歌)
ここを過ぎれば人閒の街、野あざみのうるはしき棘ひとみにしるす  (水葬物語)

京都へ行きました。
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散り果つるまで

塚本邦雄
まどろみの七、八分の白晝のその閒に盛り過ぎたり牡丹  (黄金律)
特高と呼ばれし凶器摩耗して牡丹荘養老院にほほゑむ  ( 〃 )
朋(とも)は莫逆、その逆を怖れつつありやめよ散り果つるまでは牡丹  (詩魂玲瓏)

5月も半ば過ぎたというのに、今さら4月のおさらいを「サクラ」で。
ことしの桜は、3月の奈良と明治村、4月に京都、恵那市”新田の桜”と4回。
これにご近所で撮影したものを加えて、寄せ集めました。

世には世の

塚本邦雄
歌はむとしてやすらへり歌あらぬ世には世の蝶光る山河  (天變の書)
園丁は薔薇の沐浴(ゆあみ)のすむまでを蝶につきまとはれつつ待てり  (水葬物語)
聖なるかな漢字制限三十劃以上の正字群發光す  (風雅黙示録)

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五月、ブロブディンナグ国に

塚本邦雄
壜の辣韮(らつきよう)天に首よせつつ死する五月、大人國(ブロブデインナグ)に友欲し  (綠色研究)
世の涯とおもふあたりに桐咲いて天下無頼のわれ一人なる  (黄金律)
終りある世界の朝の花市のはづれ穂麥を賣る少年よ  (靑き菊の主題)

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五月なすなき日日

塚本邦雄
木苺の五月なすなきわが日日に沓を手に穿き這ふをさな兒よ  (星餐図)
さらば若者 わが王國の晝火事のはじめのほのほ新芽のごとし  (感幻樂)
芍藥置きしかば眞夜(まよ)の土純白にけがれたり たとふれば新婚  (綠色研究)

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わたる世

塚本邦雄
平穏無事に五月過ぎつつ警官のフォークを遁げまはる貝柱  (日本人靈歌)
「戀ひわたる」とはいつの世ぞわが空を雁渡りたるあとの紺靑  (歌人)

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ふときざす

塚本邦雄
五月も制服黑き警官、車掌、火夫そのあやふやの擧手翳(かざ)しあひ  (日本人靈歌)
五月、黑き市民にまじり盗聽のため伸びしびらびらの耳達  ( 〃 )
五月祭(メーデー)の監視終りし警官ら蒼くかたまりつつ果舗のぞく  ( 〃 )
麥は穂に父は不惑にふときざす謀叛タヒチにしあらましかば  (されど遊星)

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母の日は

塚本邦雄
母の日はたちまち昏れて水中の鼠がねずみとりごとうごく  (日本人靈歌)
綠金(りよくこん)の五月 わが家の底に坐し父の化石、母の化石  ( 〃 )
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青は五月の色

塚本邦雄
男鏖殺されてしづけき夜の五月花靑素(くわせいそ)はさかのぼる乳房に  (感幻樂)
鬱金香(チユーリツプ)の辻わたりつつ かかる晝爪先を機銃掃射は過ぎき  (閑雅空間)
死語としてかつ詩語として「靑雲のこころざし」ほろにがき燒目刺  (獻身)

花靑素はアントシアンのことだそうです。
ギリシャ語で、アント(anthos)は花、シアンは青、花の青い色という意味になるそうです。
写真は東近江市甲津畑、ふたたび。
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五月といえば鯉のぼり
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ここにも蔵
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あそこにも蔵
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蔵と屋根がうつくしい村
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うつくしい村

待ちかぬる皐月

塚本邦雄
心毒はしづかに六腑めぐりをり若草色の健康保險證  (不變律)
皐月待つことは水無月待ちかぬる皐月待ちゐし若者の信念  (歌集未収録)
たましひを診(み)られてかへる花季(はなどき)の茨木診察所前の突風  (黄金律)

近江鉄道新八日市駅舎、なお。
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上りが来ます
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飲用ではありません
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入室可能だから入室禁止
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もう鳴らない
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遅れたり進んだりすることはありません

奔り奔つて新綠に

塚本邦雄
ところ得ざるはわれのみならず百束の青麥が花屋にて黄熟  (黄金律)
柹の花踏んですなはちおもむかむ碧軍派てふ旗幟(きし)のなびかば  ( 〃 )
奔り奔つて新綠に死ね玉藻刈る沖田總司に空似のをのこ  ( 〃 )

同じ写真が続くので、甲津畑をちょっと休んで、
近江鉄道新八日市駅舎で。
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色あせても輝くときがある
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ビロードのようになめらかな手触りになって
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二階は廃屋
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ブリキの看板が好きです
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白ペンキが緑にかぶります
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待合室の窓に映るのは満開のサツキか

わたしは、錆びたトタン、剥げたペンキ、歪んだ窓ガラスフェチですが、
鉄道車両には興味がないので、列車の写真はありません。
ノクチクロン42.5mmは6×6判の135mmを思い出します。ピントの浅さも同じくらいです。
そうするとズミルックス15mmはさしずめ50mm、ズイコーの17mmは55mmかな。
そんな事を考えているから、荒木経惟の「哀愁のイコンタ」じゃないけれど、
錆びたトタン、剥げたペンキ、歪んだ窓ガラスばかり撮ってしまいます。

花それ以後の空

塚本邦雄
戰争(いくさ)勃らざるもおそろし靑麥の禾(のぎ)もてくちびるに粍(ミリ)の傷  (詩魂玲瓏)
金管樂器はたと息絶えひるがほの花花 男性のうちなる女性  (綠色研究)
柹の花それ以後の空うるみつつ人よ遊星は炎えてゐるか  (森曜集)

東近江市甲津畑町。
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働き者がいるにちがいない
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百合の抜け殻だって
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蔵のたくさんある村でした
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軒下の梯子はお作法です
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五月のアゲハはまだ小さい
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風待ちのいっとき

プラモデルに夢中になった少年時代がありました。
カメラをいじっているのも同じ血のしわざ。
だからレンズを交換するのは楽しい行為です。
単焦点が、ズームが、というのは屁理屈で、メカニカルなものをさわっていたいだけ。
そうなのかもしれません。

のぞみなきにあらず 否

塚本邦雄
絶交のひだりの頬にすれすれに湖國の蝶もあらあらしけれ  (黄金律)
のぞみなきにあらず 否とよぬばたまの夕燕わが頬かすめつ  ( 〃 )

東近江市甲津畑町。織田信長にゆかりのあるところだそうです。
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パンダが見守る
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つぶらなひとみ
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落語に山吹がでてくる演目がありました
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神様かな
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信長公うまつなぎの松があります

わたしの場合、
ズームレンズを使うと、絵に合わせて画角(焦点距離)を選んでいるけれど、
単焦点を使うと、レンズに合わせて景色を選んでいる傾向があります。
そのせいか、
ズームレンズで撮ると記念写真のコレクションに、、
単焦点は自分が見た記憶の記録になっているように思えるのです。
それで最近、単焦点ばかりつかっています。
今日は、15、17、25、42.5、75mmを持って出かけました。


そのたのしみは先に

塚本邦雄
菖蒲湯ぬるし五分沈まば死に得むにそのたのしみは先にのばす  (魔王)
地獄にも五月 わが家にうちひびき父が含嗽(うがひ)の瞑(めつむ)るタルチュフ  (水銀傳説)
生けらくはわれの十指の汚れつつ五月松柏(しようはく)の花けぶるかな   (感幻樂)

新しいレンズの試写をかねてご近所のマリーナへ行ってみました。
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思うところがあって、ズームレンズをやめて単焦点レンズに集中しています。
塚本邦雄が「緑色研究」の中で、遠近法について言っています。
かれの「遠近法」はもちろん短歌の比喩なのですが、かれが数学的に正確な遠近法は終わったというとき、
わたしは写真について思わずにはいられません。。

たちどころにまた五月

塚本邦雄
たちどころに麥粒腫(ばくりふしゆ)など散らすてふ藥ためさぬまままた五月  (黄金律)
今生にうたひつくして歌の名はわすれむ虛空(おほぞら)に桐の花  ( 〃 )
こころざしありしむかしの山川(やまかは)を旅に見つ武者幟ひらめく   (花劇)

奈良新家長福寺。
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五月うとまし

塚本邦雄
他人の葬儀三つつづきてうそ寒き五月 十藥の花吹かれをり  (黄金律)
五月うとましきかな庭のくらがりにゆらりと體言止めの牡丹  ( 〃 )
黄金週間一日(ひとひ)あませりうすぐらき四辻よぎる尺蠖少女(しやくとりをとめ)   (花劇)

奈良、新家長福寺。ぼたん桜の名所だそうです。花はほとんど終わっていた4月末に訪れました。
奈良県の県花にもなっている希少種の「奈良の八重桜」は、ここにはないようです。
学名「奈良の八重桜」は、
奈良公園周辺と桂離宮などにあるようです。
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聖母月

塚本邦雄
思想すれちがふひびきにわが抱く嬰児薄目を開(あ)く五月祭  (綠色研究)
惡友のひるねの臍に一つぶの葡萄を塡めて去る 聖母月  ( 〃 )

ひきつづき明日香村。
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