こころさわぎはじめ

塚本邦雄
死海寫本三日つづきの夕凪にすなはちこころさわぎはじめつ  (歌人)
鴫を撃つたる炸裂音か否あれは睡りの底のイラク戰争  (黄金律)
ダマスクス生れの火夫がひと夜ねてかへる港の百合科植物  (水葬物語)
寒夜、舟歌くちずさむさへさびしきを父が萱草色(わすれぐさいろ)のパジャマ  (詩魂玲瓏)

南禅寺。
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死海は

塚本邦雄
死海附近に空地は無きや 白晝のくらき周旋屋に目つむりて  (日本人靈歌)
男鹿半島ひだりあがりの肩越しの雪恍惚と奪はれゐたれ  (星餐図)
胡地に友あるにあらねど愕然とあはれくろがねの冬の茄子  (詩歌變)

死海の西はイスラエル、東はヨルダン。
南禅寺。
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わたしも水甕座

塚本邦雄
過去帳に書かれざれども設樂(しだら)はな享年七十九水甕座  (風雅)
不易糊(ふえきのり)賣りゐるよろづ屋があるはうれし太秦和泉式部町(うづまさいづみしきぶちやう)  (黄金律)
地球ほろぶる冬ならなくにくれなゐの雪ふり佐野のわたりの火事  ( 〃 )

南禅寺。
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ひつじ年なので

塚本邦雄
一月の芒そよげり寒(さむ)や寒(さむ)男ことばすらみごもらず  (風雅)
硬骨漢消息絶って十二年睦月突然の訃報かぐはし  ( 〃 )
大寒のたそがれに植う白椿いくさかならずありと知れれど  (花劇)
睦月の霰はららぎわがこころよぎる月照は美男なりしか  (豹変)

ひつじを見るとカメラを向けてしまう、この固定観念。
京都国立博物館。
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結論は

塚本邦雄
とほきいくさとおもひゐたるに虹鱒の虹をななめに殺(そ)いたり吾妹(わぎも)  (波瀾)
生きて冬の海を聽くてふおそらくは血も紺靑のなごりのうしほ  (靑き菊の主題)
ぬばたまの晩年やわが歌ひたることの結論は「幻を視ず」  (不變律 遡行的一月暦二十七日)
睦月(むつき)に梅いまだするどしわが歩み去るべき方に黑き雫す  (閑雅空間)

2015年1月20日までは「とほきいくさ」と思っていました。
京都国立博物館。
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雲母坂、畷橋、六白屋、みな京都

塚本邦雄
われを父かと尋ぬる男兒あらばあれ雲母坂零下十度の寒夜  (約翰傅偽書)
われと竝んで睦月の畷もとほれり吹けど飛ばざる靑年二匹  (不變律)
六白の雪をおもへばかまくらの沖うすずみの波の上の菊  (感幻樂)
神戸港元旦未明ぬばたまの黒船から「薔薇色の人生」  (黄金律)

京都国立博物館。
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京都国立博物館。
ミュージアムショップに入ったらもう園内には戻れません。
そんな案内はショップ入口に書いてないので注意を。

けじめあやしい

塚本邦雄
君と貴様のけじめあやしき冬ひでり恍惚として檸檬(レモン)くされり  (歌人)
睦月 きさらぎ 繪札(カード)のジャック極彩の斷(き)れし上半身愛しあふ  (感幻樂)
ひるがへるみ冬の扇負修羅(まけしゆら)の昨日(きぞ)告げにけるこころのおもて  (されど遊星)

南禅寺。
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わが半生の穢

塚本邦雄
杉群(すぎむら)に雪光りふるおそらくはわが半生の穢(ゑ)を埋めつくし  (睡唱群島)
菓子屋「閑太」に人一人入りそのままの長夜星よりこぼるる雪  (豹変)
冬の星大伯母いまだ窈(えう)として一尾の皮剥(かははぎ)を食い終へつ  (歌人)

南禅寺。
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三重ノ銭湯展、見にいきました。
三重県内に昔から営業している銭湯で、現役のものはもう36しかないのだそうです。
その現役の銭湯の写真展です。
撮影は、松原豊さんという三重県在住の写真家です。かれの「村の記憶」という写真集をもっているので、ずっと関心を注いでいる写真家です。
明日25日までの開催なので、あせって行ってきました。
銭湯の所在地と営業時間などが印刷された”マップ”も用意されていました。
写真展を見た人たちが実際に入湯して、銭湯を残していってほしいのだということでした。

なお、会場の入り口に「女湯」ののれんがかけてあったので、一瞬入るのに躊躇しました。
どこかに「男湯」の入り口があるのかと思って。
でも女湯ものぞいてみたい、と思った私はけがれている。
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名前は”つう”

塚本邦雄
愛に溺るる夜夜(よよ)のよすがや鶴の身のいづくに匿(かく)るぬばたまの羽  (閑雅空間)

南禅寺。
1月4日以来3週間ぶりの撮影は京都で。
雨のち曇り。
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いつかわれ欠け

塚本邦雄
七種粥の薺缺きたり食卓の一角のわれ缺くるはいつか  (黄金律)

ナズナあります。長谷寺。
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綾羅錦繍(りょうらきんしゅう)

塚本邦雄
血紅の綾羅なびきてあひつどふ人と成りたる怪しき物たち  (不變律 遡行的一月暦十五日)
若武者はまなこ靑みて軍立(いくさだ)つ天涯に雪みちつつあれば  (感幻樂)
驛長愕くなかれ睦月の無蓋貨車處女(をとめ)ひしめきはこはばるるとも  (詩歌變)

長谷寺。
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大寒

塚本邦雄
めくるめく過去あればなほ愕然と緑濃し大寒の曼珠沙華  (黄金律)

大寒に何ぞという写真。めくるめく過去もないのに。
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太郎を眠らせ太郎の屋根に雪ふりつむ

塚本邦雄
明日は一家離散すべきに六郎を眠らせて牡丹雪はたとやむ  (黄金律)

長谷寺。
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ありてなき

塚本邦雄
雪の夜の浴室で愛されてゐた黒いたまごがゆくへふめいに  (水葬物語)

長谷寺。
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牡丹のうえを過ぎゆく

塚本邦雄
寒牡丹咲くとて立つて見に出づる娶れば咳をしても二人  (黄金律)
人の不幸見つつゆたけき日月の牡丹のうへを過ぎゆく齡(よはひ)  ( 〃 )
ふとおそるるわれの日常虐殺の日の茶の花を記憶せしこと  (花劇)

長谷寺。
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凍ててたまかぎる

塚本邦雄
昭和六十四年一月先輩の柩ひきずるラガーの歡呼  (黄金律)
凍蝶骨の髄まで凍ててたまかぎる世紀末まで三千餘日  (魔王)

なおなおなお、室生寺。
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なお、室生寺

塚本邦雄
こころざしも千差萬別室生寺のしやくなげにさす紫紺の没日  (豹変 )

なおなお、室生寺。
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心にトリコロールかかげて (3日目)

塚本邦雄
火藥庫に近き橄欖(オリーヴ)樹林には戀の時うばはれし小鳥ら  (水葬物語 )
移動する無煙火藥の位置・位置に目じるしを置く葡萄の種を  ( 〃 )
革命にうちふりし手の熱すこし冷ますため鐡の絃樂器おき  ( 〃 )
決闘の刻におくれし騎士とその牝馬に贈る蔓薔薇の鞭  ( 〃 )
少年の戀、かさねあふてのひらに光る忘れな草の種子など  ( 〃 )
ギヨティーヌに花を飾りてかへりきぬ ― 斷頭人(くびきり)の待つ深夜のキャフェに  ( 〃 )
洪水の日の花の浮標(ブイ)、群盗がかつて帽子にかざしし色に  ( 〃 )

なお、塚本邦雄「水葬物語」の中の「トリコロールの歌」から。
なお、室生寺。
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心にトリコロールかかげて (2)

塚本邦雄
旅終る二人となりてをしみあふ植民地産鳥貝サラダ  (水葬物語 )
軋みつつ背中の少女ゆすりゐる木馬、玩具の國にある危機  ( 〃 ) 
たたかひの唄に少女が和して弾きある時は皮肉めくマンドリン  ( 〃 )
陥穽を豫知するゆびのなめらかなうごきに眩暈(めまい)するチェスの騎士  ( 〃 )

昨日につづけて、塚本邦雄「水葬物語」の中の「トリコロールの歌」から引用し。
室生寺。
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心にトリコロールかかげて

塚本邦雄
三色旗 その色・色の閒隙に待ち伏せてゐる刻刻の蝶  (水葬物語 トリコロールの歌 )
リラの花踏みてゆく靴・靴 明日は戰火の街をゆきかへり來じ  ( 〃 ) 
痙攣(ひきつ)れる死鶏の眼、輪唱の 輪唱の輪のひろがるなかに  ( 〃 )
弾道の果てに野展(ひら)けいたましき空閒に馬・百合・樹木・人  ( 〃 )
囚人や死者への椅子は空席のまま 薔薇園やみ濃くなりぬ  ( 〃 )
縞馬にしたがひゆきぬ薊野にさす朱き月にくしみながら  ( 〃 )
森かげにただよふ破船、そのくらき内部にひくく祈禱ひびけり  ( 〃 )
獵犬は夜の湖に駈けのこされしギタールが囁ける死と愛と  ( 〃 )

デモに参加できないですが、せめて塚本邦雄を引用して、反テロの意思表示を。
室生寺。
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まぼろし寒林

塚本邦雄
聯立方程式のまぼろし寒林の遙かにて麦藁色の燈ともる  (歌人)

室生寺。
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雪白の

塚本邦雄
雪白の紙一かかへまじへたる塵芥焼却爐の大旦(おおあした)  (黄金律)

室生寺。
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突如ときめく

塚本邦雄
靑果店突如ときめくしきたへの衣川より冬菜がとどき  (黄金律)

長谷寺。
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明日ヴェルレーヌが死去

塚本邦雄
一月十日 藍色に晴れヴェルレーヌの埋葬費用九百フラン  (水銀傳説)
雪におほはれたる葡萄園透明にみごもれり反革命の核  (緑色研究)
孤獨きはまりて寒夜をしきり鳴くカナリアとわが汗噴くからだ  (日本人靈歌)

室生寺で。
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雪ちかき

塚本邦雄
雪ちかき野は劇場のごと昏れつ まづ刺さむ肥りたる父と鷽(うそ)  (水銀傳説)

室生寺へも。
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ほのかなる

塚本邦雄
鶺鴒のありし石過ぎ戀の刻過ぎたりほのかなる殺意はも  (睡唱群島)

なお長谷寺。
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さあればこそ

塚本邦雄
水甕座生まれは寒のさなかとかさればこそ天使もどきの眉  (花劇)

ことし最初の撮影は長谷寺で。
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年始め

塚本邦雄
八方破れの年始たれをか招くべき鍋に猩紅熱の伊勢海老  (不變律 遡行的一月暦 三日土曜キケロ生誕)

まだ京都。
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新聞休刊日

塚本邦雄
愛犬ウリセスの不始末を元旦の新聞で始末してしまった  (黄金律)

京都船岡で。
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元旦の

塚本邦雄
元旦の素戔嗚神社御手洗(みたらひ)に袖の靑貝釦おとして  (黄金律)
三十三階屋上にして元旦の薔薇色の陽を私(わたくし)せむ  ( 〃 )
去年(こぞ)のいまごろなににおびえてゐたりしか元旦の門にわれ仁王立ち  ( 〃 )
今年二千首をくはだつる淡雪の元旦の計姦計に似つ  (不變律)

上賀茂神社神矢と年賀状で元旦気分。
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ネコに元旦もないけれども。
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