獻身のきみに

塚本邦雄
秋風首にふれたる氣配この朝のわが背後靈美男なりや  (不變律 八月暦 二十六日)
われにのみ秋こそきたれ眞處女(まをとめ)のまうしろに露しとどなる山  (黄金律)
獻身のきみに殉じて寢(い)ねざりしそのあかつきの眼中(がんちゆう)の血  (獻身)

明治村 帝国ホテル
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ほがらかにながらうる夏

塚本邦雄
晩夏わが凍れる微笑 教会の薔薇窓あけもしめもならず  (風雅)
歌はずともかくほがらかにながらふる夏百日のからきなみだ  (天變の書)

明治村 聖ザビエル天主堂
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うすき汗噴くわれと

塚本邦雄
おとうとよ ここに脱水症状の向日葵のさみどりの体毛  (緑色研究)
塩うすき汗噴くわれと卵黄のおもてはかなく波うつ葉月  (星餐図)
魚卵孵化所を中心に網状の道成りぬ。市長夫人の歿後  (水葬物語)

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晩夏をめぐませたまえ

塚本邦雄
馬は睡りて亡命希ふことなきか夏さりわがたましひ滂沱たり  (緑色研究)
聖母晩夏を恩寵(めぐ)ませたまへおそらくは船渠(ドック)に満身創痍の母艦  (水銀傳説)
婦人科の医師去りてよりさはやかに秋のあめふる奴隷海岸  (透明文法)

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犯す夏ぞら

塚本邦雄
天使、告天子を犯す夏ぞらに窈窕と靑き襤褸ただよふ  (星餐図)
不姙明らかなればこの愛ながらへむ紫蘇の実噛めるわが水妖少女(オンディーヌ)  (水銀傅説)

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日日はわすれつつ

塚本邦雄
すみやかに過ぎゆく日日はわすれつつ白魚が風のやうにおいしい   (風雅黙示録)
魚市のさよりの姉妹空色のなみだながせりせりのこされよ   (黄金律)
料亭「白妙」炎昼にして透きとほるものひとつかみまないたの上   (天變の書)

東近江市五個荘。
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胎てのひらに

塚本邦雄
迦陵頻伽のごとくほそりてあゆみますあれはたまぼこのみちこ皇后   (黄金律)
百舌鳥耳原中陵(もずみみはらなかのみささぎ)夕星(ゆふづづ)濃し   (燦爛)
死に死に死に死にてをはりの明るまむ靑鱚(あをきす)の胎(はら)てのひらに透く   (星餐図)
醫師は安樂死を語れども逆光の自轉車屋の宙吊りの自轉車   (緑色研究)

東近江市五個荘。
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窓は出口

塚本邦雄
國よりさきにこころやぶれてゐたりけり銅の盥のなかの満月  (不變律 八月暦 二十日)
無頼にて眞夏も熱き珈琲をこのめりき 孤り雪谿に果つ  (装飾樂句(カデンツア))
體温の夏はわれよりやや低き海螢光(て)るたましひの沖  (感幻樂)
夏の鹽甘し わが目の日蝕といもうとの半身の月蝕  (緑色研究)

東近江市五個荘。
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200

生を呼びかえす

塚本邦雄
敗戦記念日のホテル・マヤ部屋部屋の水道管に熱湯とほる  (装飾樂句(カデンツア))
原爆忌昏れて空地に干されゐし洋傘(かうもり)が風にころがりまはる  ( 〃 )
蝉時雨ここより生を呼びかへす露ちりぢりに夕映の夏  (閑雅空間)
敗れしを至福とせむにさしぐみて空蝉ふみしだきつつありき  (不變律 八月暦 十八日)

東近江市五個荘。
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100

聖母被昇天とか

塚本邦雄
「靑蠅(せいよう)久しく斷絶」と李賀歌へりき原爆變は知らざりしかば  (風雅黙示録)
復活はだれからさきによみがへる光景か 否原爆圖なり  (黄金律)
夏の快樂(けらく)のきはみこころの絶巓をさかさまに下るしかばねの橇  (緑色研究)
禽園に夏あかときの火事蒼し赴きて斷末魔の孔雀視む  (靑き菊の主題)
十五日 金曜 佛滅 敗戦記念日 聖母被昇天祭
   唐芥子(たうがらし)くれなゐ朽ちておもかげに露のにほひのすめらみこと  (不變律 八月暦 十五日)

滋賀県多賀大社で。
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro ISO 200
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OLYMPUS E-P5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 100

夏のひかりはそそぐ

塚本邦雄
残雪のごとき鹽買ふ八月の巷 歴(れき)として今日日本の忌  (日本人靈歌)
女人は海鞘(ほや)をきざみつつあり敗戦忌四十(よそ)たびめぐるわれの敗戦  (不變律 八月暦 十六日)
馬轢死して一塊のうらわかき子宮に夏のひかりはそそぐ  (緑色研究)
裸祭の花崎遼太處女座(をとめざ)のうまれ死にたいほどはづかしい  (不變律)

滋賀県多賀大社で。
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro ISO 200



綺羅さむざむとしてひまわり

塚本邦雄
道化師と道化師の妻 鐡漿色(かねいろ)の向日葵の果(み)をへだてて眠る  (装飾樂句)
母の綺羅さむざむとして向日葵(ひまはり)の枯れつくすまで七十五日  (閑雅空間)
イカルス遠き空を墜ちつつ向日葵の蒼蒼として瞠(みひら)くまなこ  (日本人霊歌)
屋上に碧(みどり)の氷果くはへたりうらうらと不良少年の果(はて)  (歌人)

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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100

明日は明日

塚本邦雄
かたびらは葉月の風にうちなびき燭臺のごと母は倒れき  (閑雅空間)
西部劇幽霊町のぬかるみを渉る眞處女(まをとめ) 泪ながれたり  (不變律 八月暦 八日)
明日は明日海鞘(ほや)食つて女組み伏せむ  (甘露)

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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100

今日もゆったり水のなか

塚本邦雄
日常の斷崖にさるすべり咲きさむし 崩御と逝去の差  (不變律 八月暦 九日)
柩こそ繭ほどに輕かれ
 蛇の衣よりかるかれと
  葉月はじめのいささねぎごと  (感幻樂)
詩歌濃くふふみこの夜にただよふを桔梗(きちかう)の水わがこころ截る  (星餐図)

東近江市五個荘にて。
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200

愚かしき夏

塚本邦雄
愚かしき夏 われよりも馬車馬が先に麦藁帽子かむりて  (装飾樂句)
癈品回収車を聲高(こわだか)に呼ぶ處女(をとめ)きみをみすててゆくはずがない  (波瀾)
六郎と七郎と夏ゆふぐれに立つ 火星への梯子は一つ  (歌人)

東近江市五個荘にて。
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100

楕円積分

塚本邦雄
秘すれば花、秘しても核と、笑ひごとめかして文武大臣不在  (風雅黙示録)
八月に何の祝日 孵卵器のふたあけて死にし卵棄つるも  (緑色研究)
乳房ありてこの空間のみだるるにかへらなむいざ橢圓積分  (感幻樂)

東近江市五個荘にて。
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200

Song For My Father ~京都の日

塚本邦雄
ああ初夏の眞水みづから處女狼(ヴァージニア・ウルフ)をえらびたれこゑうるむ  (されど遊星)
何に溺れてただうらうらと夏の父や篳篥(ひちりき)の孔九つ昏し  (歌人)
火より昏き天の空井戸(からゐど)わが愛を涸(か)るるまで汲みつくせり父は  (睡唱群島)

7月中の3回の撮影をまとめる代わりに、7月22日の京都の撮影行をムービーに。

近江麻などで

塚本邦雄
人を拒み人に拒まれつつ葉月来る郭公のこゑうすあかね   (豹変)
人たることをおそれむ夏ふけて声にごりそむ昼の邯鄲   ( 〃 )
好漢の未婚の真夏 蚊絣の藍いろの蚊を身にちりばめつ   (緑色研究)

東近江市五個荘にて。
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200

六日のあやまちとは何

塚本邦雄
「木曾と申す武士死に侍りにけりな」否針葉樹林接吻(キス)の香の夏   (されど遊星)
むかし「踏切」てふものありてうつし世に踏み切り得ざる者を誘ひき    (魔王)
六日のあやまちのため一日(ひとひ)安息日あり なまぐさき純白の獨活(うど)  (日本人霊歌)

東近江市五個荘にて。
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200

八月六日

塚本邦雄
原爆忌昏れて空地に干されゐし洋傘(かうもり)が風にころがりまはる  (装飾楽句)
日章旗百のよせがきくれなゐがのこりてそこに死者の無署名  (魔王)
ひまはりをくろく繍(ぬ)ひとり亡命ののちの羞(やさ)しき國旗となすも  (透明文法)
六日 水曜 先勝 三隣亡 原爆忌
   八月六日すでにはるけし灰色に水蜜桃のはげおつる果皮  (不變律 八月暦)

東近江市で。
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100

先斗町で

塚本邦雄
來む世には遊女を飼ひてその中のさびしき一人「もゆら」と呼ばむ  (詩歌変)
孔雀飼ひはじめたりと父の初便りああ死の外(ほか)に飼へるはそれか  (風雅黙示録)
體温の夏はわれよりやや低き海螢光(て)るたましひの沖  (感幻樂)
太秦和泉式部町
   ははそはの母が掃いたる八畳に月光を入れわれは出ていく  (黄金律)

京都先斗町で。
こんなところでカメラをかまえることさえ無粋だけれど、せめて大げさなズームをやめて単焦点の小じんまりしたレンズで。
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 250
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100

うちわ・風鈴で

塚本邦雄
まづ脛より靑年となる少年の眞夏、流水算ひややかに  (緑色研究)
モナ・リザのゑまひの彼方わかものの貌顯つ 葉月こそ夏の燠(おき)  (感幻樂)

東近江市五個荘にて。うちわと風鈴で涼む。
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200

夏の郷愁が

塚本邦雄
花火跡情事の痕に似て胡乱(うろん)なり葉月過ぎむとするに  (汨羅變)

東近江市五個荘にて。蚊帳と麦わら帽子が、過去への入り口。
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100

水うちわ

塚本邦雄
あれは水陽炎(みづかげろふ)のひびきかサンマルコ寺院より神立ち去る音か  (閑雅空間)

東近江市五個荘にて。
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200

京都散策

塚本邦雄
雲林院(うりんゐん)界隈駐車厳禁のひるや荒鹽の香の西行  (されど遊星)
千首歌をこころざしけるわが生の黄昏にして夏萩白し  (不變律 八月暦 一日)

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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 250
中京区先斗町(ぽんとちょう)界隈
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
先斗町界隈
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
東山区鷲尾町界隈
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
鷲尾町界隈

変化(へげ)けぶりの

塚本邦雄
大王馬陸(だいおうやすで)奔りさりたるのみ 華燭百あるよその夏のゆふぐれ  (歌人)
驟雨やまざるままに花街(くわがい)をもとほれる青年印度孔雀のごとし  ( 〃 )

昨日TVで「与謝蕪村 俳句と絵画を極める」という番組を見ていたら、島原の「角屋」を重要な舞台としてお話が展開していたので、ちょっと角屋に戻って。
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 ISO 400
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 ISO 250
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 ISO 250

番組を楽しく見ていたけれど、最後まで、文が添え物で絵が主役。俳句しか取り上げないから蕪村のスケールが出なかったように思いました。そこで好きな蕪村をひとつ引用して溜飲を下げようか。

君あしたに去ぬゆふべのこゝろ千々(ちゞ)に
何(なん)ぞはるかなる
君をおもふて岡のべに行(ゆき)つ遊ぶ
をかのべ何ぞかくかなしき
蒲公(たんぽぽ)の黄(き)に薺(なづな)のしろう咲(さき)たる
見る人ぞなき
雉子(きぎす)のあるかひたなきに鳴(なく)を聞(きけ)ば
友ありき河をへだてゝ住(すみ)にき
へげのけぶりのはと打(うち)ちれば西吹風(にしふくかぜ)の
はげしくて小竹原(をざさはら)眞(ま)すげはら
のがるべきかたぞなき
友ありき河をへだてゝ住にきけふは
ほろゝともなかぬ
君あしたに去ぬゆふべのこゝろ千々に
何ぞはるかなる
我庵(わがいほ)のあみだ仏ともし火もものせず
花もまいらせずすごすごと彳(たたず)める今宵は
ことにたうとき