大原野残りをひとまとめで

塚本邦雄
琴線のありか問はむに早少女(さをとめ)がそよ空色のたましひの右  (風雅)
花とざす花苑をぬけて花ひらく獣園に不意の逢瀨を待つも  (水葬物語)

6月初めにいった大原野の写真残りを一まとめに。曲は、3年前のことも、2か月前のことも、まだ終わっていないことを刻んで。

寺山修司
みずうみを見てきしならん猟銃をしずかに置けばわが胸を向き    (血と麦)

ここは琵琶湖。
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OLYMPUS E-P5 PENTAX-FA SOFT 28mm F2.8 ISO 200

暮るる六月

彦根にて。

塚本邦雄
ひえびえと暮るる六月蒼蠅(フライ)級ボクサーが身の丈をはからる    (豹変)
いふほどもなき夕映にあしひきの山川呉服店かがやきつ    (詩歌変)
先代の背後霊レジ引受けてブティック山川のみせびらき    (魔王)
飲みすぎて水に酔ふわがはつなつの戀人の屋根の上も曇天    (驟雨修辭学)
ずぶ濡れのラガー奔るを見おろせり未来にむけるものみな走る    (日本人靈歌)

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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 100
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 100
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 100
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 100

色を消して歩けば

彦根にて。

塚本邦雄
月光わがそびら滑りつつ、遊びする女人ばかりの彦根屏風    (約翰傅偽書)
みどりごのみどりうするるときしもあれフィルムの闇に車輪炎えたり    (されど遊星)
豪雨来るはじめ百粒はるかなるわかもののかしはでのごとしも    (閑雅空間)
珈琲噴きこぼれて燃ゆるたまゆらを去りがたしこのまぼろしの生    (星餐図)
眠りて喪ふ今日の終刻 脱ぎかけし白きジャケツのなかに眼ひらく    (日本人靈歌)

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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100

日々は過ぎ われはとどまる ~菅浦

菅浦で撮った写真のまとめ。
この日の写真は、単焦点の25mmと75mm(ライカ判で50mmと150mm)だけ。
日ごろ、ズームを使うと、つい絵作りに走ってしまうのを是正したくて。

塚本邦雄
こころ移さむこころ映さむさは言へど水無月の水貝噛みきれず    (豹変)
美しきファラオの過去の妃らが狙ふみづうみばかりの領地    (透明文法)
廃港は霧ひたひたと流れよるこよひ幾たり目かのオフェリア    (水葬物語)
悲歌何するものぞ畳紙(たたう)へ走り書き一行「涙は水に還せ」    (約翰傅偽書)
たまかぎるゆふべの処女(おとめ)わが前を辞するにその翼はためけり    (風雅)
毛深き犬がかたはらに臥(ね)てこころ今ゆたけし<Les jours s’en vont, je demeure. (日々は過ぎ われはとどまる)>    (日本人靈歌)

<Les jours s’en vont, je demeure. (日々は過ぎ われはとどまる)>の元の、アポリネール”ミラボー橋”(詩集「アルコ ール」(1913)収録)に曲をつけた、マルク・ラヴォワーヌの唄で。

人工庭園てふ

塚本邦雄
酢蓮の孔酢をたたへゐるくらやみのわれに生れるまへからの耳    (緑色研究)
密通のさはれ男は神とあるかはたれにして水中の星    (星餐図)
赤い旗のひるがへる野に根をおろし下から上へ咲くジギタリス   (水葬物語)
銃身のやうな女に夜の明けるまで液状の火薬填(つ)めゐき    ( 〃 )
あまた釦(ボタン)をはづして火夫は睡りゐき今朝はきつねのてぶくろに雨    (驟雨修辞学)
梅雨の靴ふくれあがりて暗がりに臭ふ〽戀人よわれにかへ***るな    (日本人霊歌)

蹴球のみだりに甲(よろ)ふをとこらをあはれめど市に簀(す)まきの黄薔薇    (感幻樂)

この蹴球はアメリカン・フットボールかな。写真は琵琶湖水生植物公園にて。
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200

美しいウォーター・ガーデン

塚本邦雄
きぬぎぬのきぬのうすべに払暁にはつかに見えをりし湖畔亭   (豹変)
箱庭の繁みに汨羅(べきら)造らむとはこびし寒の水二リットル   (花劇)
散文の文字や目に零(ふ)る黒霞いつの日雨の近江に果てむ   (されど遊星)
玩具函(おもちやばこ)のハーモニカにも人生と呼ぶ獨房の二十四の窓   (約翰傅偽書)
湖の夜明け、ピアノに水死者のゆびほぐれおちならすレクイエム   (水葬物語)

咲けよ忿りの顎鬚の花今朝のあさサッカーかへり討ちのわかもの   (星餐図)

琵琶湖水生植物公園にて。
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200

余呉湖つづき

塚本邦雄
聴きつつ睡るラジオの底の夏祭そこ曲がり紫陽花を傷(いた)むるな   (緑色研究)
黒紫陽花(くろあぢさゐ)、黄のあぢさゐをこひねがふわが曇日(どんじつ)の恋成らざらむ   (睡唱群島)
額紫陽花ありつつ見ざるきのふけふ浅きねむりは老いをいざなふ   (花劇)
われが詩歌のほろびを言ふにみなづきの杏少女(からももをとめ)もみもみとして   (詩歌変)

サッカーでなくラグビーだけれど、塚本邦雄のつづき、
カラー・テレヴィの寒の蹴球、肝臓のごときボールをまた見喪ふ   (日本人靈歌)

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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheye ISO 100
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200

湖畔であじさいを

余呉湖にて。

塚本邦雄
悪名すでに死後のごと立ちはつなつの鼻風邪にうす光る人中(じんちゆう)  (水銀傳説)
夏風邪にくちびるかわく蜃気楼(かひやぐら)見しおもひでのあざやかにして  (豹変)
女逐ひてうつつなかりし 六月に見ず八月に見たる紫陽花(あぢさゐ)  (閑雅空間)

希臘には七月の雨、靴屋わが靴に鞠躬如と脂して  (緑色研究)

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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 ISO 200


みづうみの村で

塚本邦雄
みづうみに水ありし日の戀唄をまことしやかに彈くギタリスト  (水葬物語)
黴雨空(つゆぞら)がずりおちてくる マリアらの眞紅にひらく十指の上に  ( 〃 )
しかもなほ雨、ひとらみな十字架をうつしづかなる釘音きけり  ( 〃 )
淡水の潮とまじはる河渉りたびびとら麦の種子をもとめき  ( 〃 )
渇水期ちかづく湖(うみ)のほとりにて乳房重たくなる少女たち  ( 〃 )
戰爭のたびに砂鐡をしたたらす暗き乳房のために禱るも  ( 〃 )

警官の蹴球金網越しに見てほほゑめる蒼白の犬の牙  (日本人靈歌)

ここは菅浦。「月ノ浦惣庄公事置書」 (岩井三四二、第10回松本清張賞): を読んでから一層魅力を感じるようになった所。
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 Voigtlander COLOR-HELIAR 75mm F2.5SL ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 Voigtlander COLOR-HELIAR 75mm F2.5SL ISO 200


いかぐ糸の里といわれた村で

塚本邦雄
毛深き犬がかたはらに臥(ね)てこころ今ゆたけし<Les jours s’en vont, je demeure. (日々は過ぎ われはとどまる)>    (日本人靈歌)
不渡手形遡求権のごとき恋 されば六月の鯖かがやける    (緑色研究)
微笑もて侮蔑に應ふ 夕空のほととぎす聲かすかに蒼(あを)し    (されど遊星)
緑蔭の黒蔭となるひるつかた牝猫敵意にみちてわが辺(へ)に    (緑色研究)
繭煮つつゑまふいもうとまへがみのうづゆるやかにわれを殺(あや)めよ    ( 〃 )

サッカーの制吒迦(せいたか)童子火のにほひ矜羯羅(こんがら)童子雪のかをりよ    (天變の書)

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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200

滋賀県長浜市木之本町大音にて。


<Les jours s’en vont, je demeure. (日々は過ぎ われはとどまる)>は、アポリネール「ミラボー橋」にでてきます。

アトリウム

塚本邦雄
逆吊りの刑の眞紅の蕃椒(たうがらし)罪あるものまづ人を裁け  (汨羅變)
王も王妃も生まざりしかばたそがれの浴場に白き老婆は游ぐ  (水葬物語)
青蔦の窓はるかなるものがたり美しき隠し子が母犯す  (睡唱群島)
出埃及記とや 群青の海さして乳母車うしろむきに走る  (緑色研究)

蹴球(しうきう)の男罌粟(けし)の實刻刻に跳ねて彈(はじ)けて裂けて散るかも  (閑雅空間)

この「蹴球」はラグビーだろうけど。写真は琵琶湖水生植物公園ロータス館にて。
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200

ずいと夏に入る

塚本邦雄
散文の文字や目に零(ふ)る黒霞いつの日雨の近江に果てむ  (されど遊星)
ずいと夏に入る法隆寺くらがりに天衣(てんゐ)の胸がゆるやかすぎる  (約翰傅偽書)
還俗(げんぞく)の朗朗として夏あさきちまたに女犯(によぼん)こほしからむ  (歌人)

返り討ちにあひける花の蹴球の荒寥としてひるのロッカー  (豹変)

琵琶湖水生植物公園にて。
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 200

菖蒲白

勝負しろ! と啖呵を切ったのは少年時代からあと絶えてなし。軟弱なやつにはソフトフォーカス・レンズで。

塚本邦雄
イエスの衣ほどに汚れて疾風(しつぷう)の翌日の菖蒲田の白菖蒲(しろしやうぶ)  (豹変)
菖蒲白しとおもふすなはち昃(ひかげ)りてそのまま神隠しのちちはは  (歌人)
君に献ず菖蒲(あやめ)真処女(まおとめ)わが愛のおよばぬ方に死につつ生きよ  (星餐図)

苧環(をだまき)は風にほろぶる 総領の蹴球横好きにして天才  (閑雅空間)

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OLYMPUS E-P5 PENTAX-FA SOFT 28mm F2.8 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 PENTAX-FA SOFT 28mm F2.8 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 PENTAX-FA SOFT 28mm F2.8 ISO 200


僞「睡蓮」(にせすいれん)のうしろ

写真の睡蓮は「僞」ではなく草津市立水生植物公園にて6月14日撮ったもの。

塚本邦雄
食蟲植物園をただよふ尼僧群生國(しやうごく)つまびらかならざるも  (靑き菊の主題)
モネの僞「睡蓮」(にせすいれん)のうしろがぼくんちの後架(こうか)ですそこをのいてください  (魔王)

神にも母にもかつて跪きしことなしサッカーの若者の血噴く膝  (緑色研究)

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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200

半夏(はんげ)の花ひらく

塚本邦雄
夢前川(ゆめさきがは)の岸に半夏(はんげ)の花ひらく生きたくばまづ言葉を捨てよ  (天變の書)
夢前川夢に架かれる橋々の一つ知らねばわが歌成らず  (波瀾)

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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 ISO 200

琵琶湖畔、草津市立水生植物公園にて。

まだ善峯寺

塚本邦雄
家族火星に遣らむはかなきよろこびをほととぎす藍色のほととぎす  (されど遊星)
梅雨の蒼き窓窓閉(し)めて何か待つテレーズ・ラカンめける妻達  (装飾樂句)
煙突掃除夫初夏の天より降(くだ)りくる、そを見つつわれの魔の下半身  (水銀傳説)
今日はすなはち明日のなきがらほととぎす聞きし聽きたる聽かむ死ののち  (獻身)

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OLYMPUS E-P5 Voigtlander COLOR-HELIAR 75mm F2.5SL ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200

卯の花と紫陽花と皐月と

梅花空木、紫陽花、皐月、京都西山善峯寺で。

塚本邦雄
「天壌無窮の幸運」とこそ聞きゐしか 卯の花腐し人間腐し  (されど遊星)
花空木(はなうつぎ)雨にひしめき愛したる数と殺(あや)めし数異ならず  (閑雅空間)
放蕩息子遺體の帰宅紅うつぎ  (甘露)
箱根空木咲く餞別の絹沓下  ( 〃 )

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OLYMPUS E-P5 M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200

しやうぶ

三重県亀山市、亀山公園しょうぶ園で。

塚本邦雄
拳銃の重みこほしきうるしやみ菖蒲(あやめ)あやふくほぐるる時ぞ  (閑雅空間)
断念のいのち光れり 脣(くち)かみて一把の菖蒲より若き僧  (豹変)
皮膚藍色(チアノーゼいろ)の菖蒲を剪りてわが誕生日なり 生(あ)るるは易し  (日本人霊歌)
夕雨に光る黄菖蒲(きしやうぶ)おそらくは遠からず敵が一人みまかる  (花劇)

断念のいのちと聞いて、思い出したのは石原吉郎。
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 ISO 100
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheye ISO 100
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 100
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander COLOR-HELIAR 75mm F2.5SL ISO 100


Kyoto Yoshimine (3)

塚本邦雄
鶏舎の暗がりの擬卵につきあたる牡鶏 今日を<父の日>とせむ  (日本人靈歌)
紫陽花に日は照り昃(ひかげ)れるかなた「夢占い」の墜ちゆく靑年  (水銀傳説)
緑葉(りよくえふ)金にひるがへる日をわが愛の始めとなせりたぬしき疫病(えやみ)  (感幻樂)
合歓(ねむ)開く夜は銀漢(ぎんかん)の銀微塵(ぎんみじん)しぶききらめきその恋遂げよ (睡唱群島)
眼底に瞋恚(いかり)しづめてたそがれの天初夏(はつなつ)の星湧くごとし (歌人)
雨あかつきとぼそくるや一瞬に咲きほこるなり千手観音  ( 〃 )

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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200

Kyoto Yoshimine (2)

善峯寺は、徳川綱吉の生母桂昌院にゆかりが深いとか。

塚本邦雄
わが飼へる犬が卑しき耳垂れて眠りをり誰からも愛さるるな  (裝飾樂句)
六月六日芒種(ばうしゆ)、歯齦(はぐき)のかすりきず父棄つる心未ださだまらず  (睡唱群島)
父はわが額(ぬか)もて額(ぬか)の熱はかる天罰の熱かすかなるかな  (靑き菊の主題)
茴香(ういきやう)菓子(くわし)などささめける食堂に追ひこまれたり「父の日」の父  (歌人)
老ゆるはおそろしき六月琅玕の一つかみ魂の価(あたひ)は  (花劇)

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OLYMPUS E-P5 Voigtlander COLOR-HELIAR 75mm F2.5SL ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-P5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander COLOR-HELIAR 75mm F2.5SL ISO 200

芒種 かまきりしょうず ~Kyoto Yoshimine

京都市西京区大原野、善峯寺(よしみねでら)で。

塚本邦雄
六月の夜への挨拶「殺される美しいお婆さんおやすみ!」  (緑色研究)
咎ありてわれは死なざる六月の墓群(はかむら)うすら汗したたらす  (されど遊星)
耽溺のいまだ鼻孔に夏あさき風はかよひて夜のブラームス  (靑き菊の主題)
蚕(こ)の国にいたるはつなつ父となりその日よりかなしみを紡(つむ)ぐ  (睡唱群島)
母よ六月神もおとろへたまはむと煮る粥に夕星(ゆふづつ)の色の泡  ( 〃 )

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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-P5 M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200


京都大原野 花の寺

京都市西京区大原野、西行ゆかりの勝持寺にて。

塚本邦雄
千首歌をこころざしけるわが生の黄昏にして夏萩白し  (不變律)
殺せし者殺されし者死にし者死なしめられし者 萩蒼し  (魔王)
はたと片陰にてゆきあひしひとの妻と干鰈(ひがれひ)のこと西行のこと  (歌人)
くれたけのたけのこ啖(くら)ふきみかつて鬼拉(きらつ)の体をわれに強ひたり  ( 〃 )
老コクトーに獻ず 籠よりはみ出して筍の金色の體毛  (緑色研究)
文弱のわがこゑほそる六月のやみに突つたつ美男韋駄天(ゐだてん)  (天變の書)

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OLYMPUS E-P5 M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander Nokton 25mm f0.95 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 Voigtlander COLOR-HELIAR 75mm F2.5SL ISO 200


3週間ぶりの撮影

5月17日以来3週間ぶりの撮影は京都市西京区大原野。

塚本邦雄
詩歌てふこの夕映にわたり来て鶴のこゑしたたかに蒼し  (天變の書)
われら死に逅ふまで戀すなれ夏の扉(と)に汗袗(かたびら)のえり釘もてつなぎ  (感幻樂)
はつなつと夏とのあはひ韻律のごとく檸檬の創現(あ)るるかな  (水銀傳説)
孤獨にて初夏の遊園地の類人猿(チンパンジー)の最敬禮をうけらる  (日本人靈歌)

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OLYMPUS E-P5 Voigtlander COLOR-HELIAR 75mm F2.5SL ISO 200
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OLYMPUS E-P5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 ISO 200
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD ISO 200


光あふれて

塚本邦雄
六月水のごとくに來る 赤外線照射室の扉(と)押す聖・農夫    黄道周遊記   (歌人)
カレンダー六月の繪は漆黒の霞わが死を待つビアズレー   (驟雨修辭学)
乳房 かつて檜のごとく直ぐに立ち愛こばみたる一人(いちにん)を待つ   (水銀傳説)
女體きらり男體ぎらり六月の身の影五尺 この世うるはし   (魔王)
天正十年六月二日けぶれるは信長が薔薇色のくるぶし   (天變の書)

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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200

回顧趣味 (2)  ~自作のパイプ

塚本邦雄
遠き日につみかさねける憎しみと花あぢさゐの青なまなまし   (初學歴然)
われがもつとも惡(にく)むものわれ、鹽壷の匙があぢさゐ色に腐れる   (日本人靈歌)
なまぐさきもの満ち百の花きざすあぢさゐの心電圖を撮れ   (緑色研究)

また身辺整理の手を止めて。
パイプは、使っていたのは1973年ごろから7、8年間。
そのころパイプ煙草を買いにいったお店でもらっていた小冊子が出てきたので、つい見とれた。

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無題

塚本邦雄
花榊(はなさかき)暗しわれらがうつし身に蚊はまつはりて父の日の雨   (睡唱群島)

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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro ISO 100
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OLYMPUS E-M5 Voigtlander COLOR-HELIAR 75mm F2.5SL ISO 100
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OLYMPUS E-M5 ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro ISO 100

ネラ・ファンタジア

五月のまとめムービー。
五月は、亀山市坂本棚田(5/4)、滋賀県日野町正法寺(5/5)、熊野市丸山千枚田(5/8)、岐阜県郡上市石徹白(5/17)と計4回の撮影日。

塚本邦雄
残花紅き夕べの庭に下り立ちて水飲めり万斛(ばんこく)の憾みのごとき   (透明文法)
女人一人だましおほせず脚長き彼奴(きやつ)むかしから水田の鳥  (風雅)
死後にも五月あらば初めて訪(と)はむ町「桐生」われ憎みし人「桐生」  (歌人)
めつむれば夏あさくして家ぬちのいづくにか一かけらの翡翠(ひすい)   (豹変)
めざむれば新緑の天さかさまの井戸あふれ今日も他人の娶り   (緑色研究)




回顧趣味  ~プラウベルマキナ67

すみやかに月日めぐりて六月のうつそみ淡く山河(さんが)濃きかな (塚本邦雄 黄金律)
聖六月後架明るく一匹の銀蠅がわれにこころゆるす (塚本邦雄 風雅黙示録)

少しずつ進めている身辺整理の手をつい止めてしまうことがある。
プラウベルマキナ67は、もっとも長い期間使ったカメラ。1979年末から20年近く使った。
使用説明書に載っているカメラの構え方が、両目を開け肘を閉じたきちんとしたものだったので、つい見とれた。

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幼年

塚本邦雄
どこまでも坊やのさきへさきへと翔(と)ぶ斑猫と慈善音楽会へ  (水葬物語)
瀕死の扇風器にゆび入れて死なしめつ夏まだきわが就眠儀式  (感幻樂)
蒼き貝殻轢きつぶしゆく乳母車・many have perished, more will.(あまたほろびたり、さらにほろびむ)  (日本人靈歌)

就眠儀式という言葉を福永武彦の「幼年」で知ってもう五十年以上になる。いまも儀式があるのは成長していないからか。斑猫はこれも五十年以上まえに父と山登りをしたときに教えられた。貝殻は私の最初のコレクションだった。無知で残酷で幼かったころ。
石徹白にて。
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200
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OLYMPUS E-P5 LUMIX G VARIO 45-200/F4.0-5.6 ISO 200

レナード・バーンスタイン交響曲 第2番「不安の時代」 ~”many have perished, more will.”の引用元、オーデン「不安の時代」(1948年ピューリッツァー賞詩部門)による交響曲