2013/10/29
岐阜県白鳥町石徹白。
石徹白(いとしろ)にある鮎川信夫の詩碑。「荒地」詩人の晩年の詩を、「荒地」同人の疋田寛吉の書で。
なつかしい「荒地」。郷愁のいとしろ。



山を想う 鮎川信夫
帰るところはそこしかない
自然の風景の始めであり終りである
ふるさとの山
父がうまれた村は山中にあり
母がうまれた町は山にかこまれていて
峰から昇り尾根に沈む日月
おーいと呼べば
精霊の澄んだ答えが返ってくる
その谺のとどく範囲の明け暮れ
在りのままに生き
東洋哲人風の生活が
現代でも可能であるのかどうか
時には朝早く釣竿を持ち
清流をさかのぼって幽谷に魚影を追い
動かない山懐につつまれて
残りすくない瞑想の命を楽しむ
いつかきみが帰るところは
そこにしかない