2011/09/30
叔母の思い出

E-P1 LUMIX G 20mm/F1.7
◆オリンパスペン・ケース (※ これはフィクションです)
叔母の遺品整理をしていたら、オリンパスペンの赤いソフトケースが出てきた。
叔母といっても兄弟の多い父の一番下の妹なので、わたしより3つ上だった。赤いケースは覚えている。ペンの何かの記念品だった。うれしそうに見せてくれた事が思い出される。
遺品の中にカメラはなかった。ペンD2かD3だったような気がする定かでない。
叔母は、山登りが好きで、山の写真をよく撮っていた。気に入った写真を四つ切りに引き伸ばして飾っていた。
写真に凝るような事はしなかったから、ただただ自分が美しいと思った景色を素直に撮っていただけだろうが、引き伸ばされた写真はわたしにもうつくしいと感じさせるものだった。
ある時、山の空は本当はもっと青くて夜空のように暗いが、写真に撮ると白くなってしまう、と相談された。少し写真に凝っていた私は、オレンジ色のフィルターを貸してあげた。
しばらくして、こりゃダメだわ、とフィルターを返された。写真がザラザラになると。
わたしは、うっかりして露光倍数を教えていなかった。
そんな事を思い出しながら、赤い人工革のソフトケースをなでていた。
カメラはなくなったけれど、四つ切りの写真は一枚ぐらいどこかにあるのではないだろうか。もう一度、見てみたい。その風景に向かってカメラを構えている若い叔母の姿を想像したい。元気な姿を想像したい。