口しびれつつ
愛人とひるまで寝むに天心の告天子(かうてんし)くそやかましき天使 (黄金律)
菊科植物みるかげもなく「汝臣民」てふ猫撫声のそらみみ (汨羅變)
夏大根に家中(いへぢゆう)の口しびれつつ今日終る 國歌うたはず久し (日本人靈歌)
(塚本邦雄の短歌は写真と無関係です。塚本邦雄を尊敬していますが、引用した歌はブログの護符かお守りのつもりです。)
昨日のつづきで。

NOKTON 17.5mm F0.95

NOKTON 17.5mm F0.95

キヤノン7用 CANON 50mm f0.95
塚本邦雄の、
一首目の「愛人と・・・・」という歌が、私には玉音放送を指しているように感じられます。
二首目は「汝臣民」を文字ではなく音としていますから、これも玉音放送だろうと思います。
一首目は8月15日、二首目はそれ以後の秋ごろの時期だろうと想像しますが、二首目も8月15日と考えることは可能です。
もしも二首目が敗戦のその日の歌だとすると、作者はそれ以前に負け戦を自覚していたことになります。
塚本邦雄は呉で軍の会計事務の仕事についていて、きのこ雲を遠望したと自ら言っていますが、
軍関係者ならば、原爆投下後の悲惨な現実も見たのではないでしょうか。彼は語っていませんが、
広島から逃れてきた被災者がいたはずですし、もしかしたら被災直後の広島へ足を踏み入れているのではないかと想像をたくましくするのです。
「菊科植物みるかげもなく」が彼にしてはあまりに直接的な言い方なので、それもヒロシマで実際に見たと想像すれば納得できます。
そして、その惨状を脳裏に15日を迎えれば、放送の声もうつつに聞こえなかったのではないでしょうか。