肉(しし)ふとり、垣爛(ただ)れ、死後に聽く

塚本邦雄
桔梗濃し神を選ばば七人のユダを宥(ゆる)して肉(しし)ふとりたる  (天變の書)
遠縁(とほえん)に戰犯一人ありしこと白萩の垣爛(ただ)れゐしこと   (歌人)
バッハ管弦組曲二番ロ短調死後にし聽かばふたたび死なむ   (約翰傅偽書)

京都西陣、三上家路地。
ようやく、沼克己さんの『遊遊爺的なボクの時間』にあった路地に到着。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8

塚本邦雄『黄昏楽 考幻学的与謝野蕪村ノート ―』(短歌誌「喜望峰」1967年12月)より引用。
 蕪村のライフ・ワークの中から『晋我追悼曲』一篇をのみ採り、他をかへりみぬのは私の独断であり、妄執に似たえらびに過ぎぬ。だが私はこのえらびを以て己が審美眼を験してきたし、この後もうたがはないだらう。即ち、たとへば晶子ならば『みだれ髪』一巻、暮鳥の全作品からはあとにも先にも「囈語」ただ一章、静雄については『わがひとに与ふる哀歌』のみ、吉岡実ならば『僧侶』と、私の選択は一見刻薄をきはめる。・・・・

先日のブログ記事で引用した吉岡実「僧侶」書評にも同じような記述があったので、暮鳥『囈語(げいご)』が気になりました。
国立国会図書館のライブラリーで原本が見れましたし、青空文庫の山村暮鳥「聖三稜玻璃」(せいさんりょうはり)でも読めました。

囈語   【げいご】

 竊盗金魚       【せっとうきんぎょ】
 強盗喇叭       【ごうとうらっぱ】
 恐喝胡弓       【きょうかつこきゅう】
 賭博ねこ       【とばくねこ】
 詐欺更紗       【さぎさらさ】
 涜職天鵞絨(びらうど)   【とくしょくびろうど】
 姦淫林檎       【かんいんりんご】
 傷害雲雀(ひばり)   【しょうがいひばり】
 殺人ちゆりつぷ       【さつじんちゅうりっぷ】
 墮胎陰影       【だたいいんえい】
 騷擾ゆき       【そうじょうゆき】
 放火まるめろ   【ほうかまるめろ】
 誘拐かすてえら。   【ゆうかいかすてえら。】

これで100年前(1915年 大正4年)の作品だそうです。

愕然と思ひ

塚本邦雄
愕然と思ひおよべばシンデレラ深夜の馬車は鳳輦に似つ  (黄金律)
秋の霞甍をひたす晝われや人とかなしみをわかたざらむ   ( 〃 )
短日のそのみじかさを嘉(よみ)しつつ源氏「野分」の巻飛ばし讀み   ( 〃 )

京都御所周辺で。かけまくも、かしこきあたりをうろうろとして。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOKTON 25mm F0.95
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

われにまさるわれ

塚本邦雄
われにまさるわれの刺客はあらざるを今朝桔梗(きちかう)のするどき露   (魔王)
レスラーがグレコ・ロマンのほろにがき對位法 月、枇杷色に満つ   (感幻樂)

京都プラント。ほとぎす、さるすべり、かえで、ききょう。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 75mm F1.8
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

音もなく

塚本邦雄
音もなく牡蠣啖(くら)ひゐる家族らのたれか罪犯さず生終へむ   (日本人靈歌)
秋分の蚤の市にて見出でける銀の匙血をぬぐひたる痕   (黄金律)

京都西陣。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

こころぞさわぐ

塚本邦雄
秋冷のこころぞさわぐこの世よりあらざらむ世への時の急流  (黄金律)
ゆふべは秋の西方昏し飛ぶ鳥の明日も屋上を奔れ鳶職   ( 〃 )
扉臙脂に塗りかへたれば秋風の次におとづるるものがおそろし   ( 〃 )

京都西陣。
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8
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M.ZUIKO 17mm F1.8

きょうは久しぶりの撮影行。目的は京都西陣の路地ですが、ついうろうろとして、あちらこちらで足が止まります。でも、空白期間が長かったせいか、撮影枚数は伸びず、いつもの半分のショット數でした。脳が硬直した思考になっています。
目的地は、沼克己さんのブログ『遊遊爺的なボクの時間』の2015.09.06 の記事にある路地ですが、まだ着きません。

眞紅(まくれなゐ)の眞實

塚本邦雄
われもこの國も不安に狎れむとし鶏頭の紅く死せる鶏冠   (日本人靈歌)
防衛廳まへも通りて唐がらし賣りに來る眞紅(まくれなゐ)の眞實   ( 〃 )
不思議なる平和がつづきゐて檻の石胎の鶴、多産の駝鳥   ( 〃 )

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このところ写真を撮れていないので、今日で5日つづきの過去の遺物でおちゃを濁しているけれど、8年も9年も前の写真からちっとも進歩していないことを再確認して、ますます写真が撮れなくなってしまいそうです。昨日は奈良橿原のホテイアオイだったけれど今日はご近所のお茶畑。

脫出したし

塚本邦雄
姦淫は母もつことにはじまりて酢の底となる皿の繪の鳥   (綠色研究)
抒情詩もて母鎭めむにあたらしき鋸の齒のかたみに反(そむ)く   (水銀傳説)
日本脫出したし 皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係りも   (日本人靈歌)

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ZUIKO ED 8mm F3.5 Fisheye
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ZUIKO ED 8mm F3.5 Fisheye
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ZUIKO ED 8mm F3.5 Fisheye

死ぬことは恐ろしいです。塚本邦雄が書いた文に、次のようにありました。

・・・・「僧侶」一篇は紛れもなくこの寺院の司祭であり、現代詩の最も危険な傑作である。私は歌集『魚藍』から最新作「立体」までを熟読してなお、この傲慢な選択に従おうと思う。暮鳥の全作品中「囈語」(げいご)ただ一篇を探り、静雄のライフワークから「わがひとに与ふる哀歌」以外を清去するより、更に苦痛を件うえらびではあるが。
詩人は絶対値に近い一篇の傑作の為に死んでもよいのだ。・・・・なまじ成仏などすることのない極重悪人の典型としての、禁断の新書を成されることを切望するものである。
日本読書新聞 1967年11月6日「修羅と悪徳との凶変の証~『吉岡実詩集』について」

生涯に代表作と呼べる作を、死ねば、もう付け加えることは不可能。
中平卓馬に「来たるべき言葉のために」があるといっても、そのなかの写真の一枚も思い浮かびません。細江英公のとった三島由紀夫や横須賀功光の資生堂ポスターや森山大道の犬はすぐに脳裏に浮かぶけど、中平卓馬にそんな写真がありません。もとより、彼は「代表作」など望んでもいないのでしょうが、写真家という肩書で印象に残る写真がないのは、やはり残念な気がします。

われに二人の神

塚本邦雄
ちちとははわれに二人の神います透きとほるかに尾花夕映(をばなゆふばえ) (新歌枕東西百景 埼玉県秩父郡両神村薄)
梁(やな)出づる魚、笛の胴、琵琶の首、秋はかなしき音に鳴くものを ( 〃  福島県河沼郡柳津町琵琶首)
ひれふるは愛のあかしぞ夜もすがら火の星嶺にまたたけ ( 〃  佐賀県東松浦郡厳木町星領)

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溶けゆくダリア

塚本邦雄
長子偏愛されをり暑き庭園の地(つち)ふかく根の溶けゆくダリア  (装飾樂句)
天國荘養老院に今年死者皆無 牛肉いろの煙突  ( 〃 )
胃を病みて子と鞦韆(しうせん)に遊びをり<平和なれども地を嗣がぬもの>  ( 〃 )

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還り來しものも忘れられ

塚本邦雄
アヴェ・マリアの忘れゐし節(ふし)おもひ出づ死魚浮かびたる午(ひる)の干潟に  (装飾樂句)
公園のシーソー赤く塗られたり 還り來しものも忘れられて死す  ( 〃 )
聖餐に列すといへど合掌の肘はりてひとの祈りを侵す  ( 〃 )

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Pentax FA soft 28mmF2.8
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Pentax FA soft 28mmF2.8
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Pentax FA soft 28mmF2.8

人に渇

塚本邦雄
白く曇れる滅紫(めつし)の葡萄とほざけよこの眞晝われは人に渇き  (蒼鬱境)
萬象の中なる僕(しもべ)わがために菊靑きさきの生(よ)をたまふべし (靑き菊の主題)

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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

しるしの下に

塚本邦雄
赤きアポロのしるしの下に若者は給油せり疼(いた)みもてそれを享く  (綠色研究)
草の上の晝餉(ひるげ)終りて背合せにはらから眠る靑き「ファミリア」 (マツダの広告より)
鮮紅のダリアのあたり君がゆかずとも戰争ははじまつてゐる  (黄金律)

ギアとかダイヤルとかが好き。トヨタ産業技術記念館。
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SUMMILUX 15mm F1.7
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2
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NOCTICRON 42.5mm F1.2

縦横無尽とか

塚本邦雄
秋ふかきものの氣配やわが母のかなしみしことを吾(あ)もかなしまむ  (薄明母音)
母よ口あきたまへすずしくなまぐさくヴァチカン宮殿の厨見ゆ  (綠色研究)
曼珠沙華かなしみは縦横無盡  (斷絃のための七十句)

ご近所。
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NOKTON 25mm F0.95
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NOKTON 25mm F0.95
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NOKTON 25mm F0.95

あしもとに秋

塚本邦雄
秋風が鬱の顱頂をかすめたり「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ」  (黄金律)
眞處女(まをとめ)の息吹みだれて金盥(かながらひ)ころがれり新秋のひびきあり  ( 〃 )
邯鄲の屍ぞころがれるあしもとに秋風のゆくへつきとめたり  ( 〃 )

なお途中下車の鈴鹿市白子。
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3
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TOKINA Reflex 300mm F6.3

「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ・・・」の歌には、『「アレバ」は「アラバ」の誤りなれば』と詞書がついています。
「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」は教育勅語の一節です。

過ぎゆく

塚本邦雄
おそらくはつひに視ざらむみづからの骨ありて「涙骨(オス・ラクリマーレ)」  (約翰傅偽書)
つひにわれも母のみの子にあらぬとふことわりや夜半を過ぎゆく蹄  (薄明母音)
母が疼み子吾にひびけこれの世に一筋の血もて繋がれにけり  ( 〃 )

なお途中下車。
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M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm
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M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm
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M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm